※導入したプログラム:チームコーチング(システムコーチング®)
成果
- 3ヶ月間のシステムコーチング®(2時間✕6回)を通じて、一人ひとりのキャリアだけでなく、「チームとしてどうなっていきたいのか」を考える機会が生まれた。
- 対話を通じて、チームの中に存在している違い(経験の多寡、ランクの違いなど)による無意識の壁やチームとしてのあるべき姿が“見える化”されていった。
- 結果、チーム内の意識や言動にポジティブな変化が現れ、チームとしてより高いレベルで機能し始めたと感じる。
参加者インタビューまとめ
<課題>
- 30年の歴史を持つ、鹿児島県の大隅半島にある代表的な総合病院・大隅鹿屋病院。内科チームは17年前に内科医1人からスタートし、だんだんと増えてきた。
- 医師という職業は、自分のスキル(知識・経験・技術)をいかに高めていくかという専門性が高い仕事であり、10年後も同じ病院にいることは考えづらい。皆が10年後はバラバラになっている可能性も高い。
- その中で「内科チーム」として、お互いを補い合い、高め合う、より望ましいチームを目指したいと考えていた。
<検討プロセス/実行施策>
- 全6回のシステムコーチング®を行った。
全体の主なプロセスは以下の通り。
第 1 回:対話のグラウンドルールを作る
第 2 回:チームの願いと恐れを知る
第 3 回:お互いの価値観を知る
第 4 回:秘密の自分を語る
第 5 回:チームに必要なキーワードを知る
第 6 回:ビジョンを描き、実行計画を立てる
<結果>
- プログラムを通して、チームの関係性が強化された。
- これまで語り合う機会がなかった「チームとしてどうありたいか」が意識されるようになった。
- お互いが深い価値観のレベルで相互理解し合うことにより、お互いを尊重し合う空気が生まれた。またチームのビジョンを描くきっかけになった。日常の小さな変化だが、これからのチームの意思決定や参加姿勢などに影響があると感じている。
参加者インタビュー
話し手
大隅鹿屋病院 副院長 田村 幸大氏(以下:田村氏)
「一人ひとりがどうなっていきたいか」から「チームとしてどうなっていきたいか」を考えるようになりました
―
今回のシステムコーチング®を通じて、どのような変化がありましたか?
田村氏
これまでは「“一人ひとり”がどうなっていきたいのか」といった個人の話に終始しがちだったところが、「“チームとして”どうなっていきたいのか」と考えるようになりました。ここが一番大きかったと思います。
「チームの存在」を皆が意識することで、「チームの問題」についても意識に変化がありました。
「チームの存在」を皆が意識することで、「チームの問題」についても意識に変化がありました。
―
具体的には、どのような変化なのでしょうか?
田村氏
例えば、「若い先生達のトレーニング」などでしょうか。
内科チームの中にも、年次が上で経験豊かな先生もいれば、若い先生もいます。
これまではトレーニングを考えるのは、「(リーダーである)私が考えることだ」と思われていましたが、「皆で考えることなのだ」と意識が変わりました。
普段からいつも、チームとしてこうしよう、などと話されているわけではないのですが、新しい先生が入ったときなどに自然と、「新しい先生の研修どうしようか?」とチーム内で対話がされるイメージです。
内科チームの中にも、年次が上で経験豊かな先生もいれば、若い先生もいます。
これまではトレーニングを考えるのは、「(リーダーである)私が考えることだ」と思われていましたが、「皆で考えることなのだ」と意識が変わりました。
普段からいつも、チームとしてこうしよう、などと話されているわけではないのですが、新しい先生が入ったときなどに自然と、「新しい先生の研修どうしようか?」とチーム内で対話がされるイメージです。
問題の原因は結局、「チームに対しての意識」。対話を重ねる中で、“チームという存在”への意識が生まれました
―
確かに皆さまの中で、回を重ねるごとにコミュニケーションが活発になっていった印象がありますね。他にも変化はありますか?
田村氏
「球拾い問題」などもそうですね。
誰の仕事とは決まっていないけれども、やらないといけない仕事ってありますよね。
それが取りこぼされてしまう「球拾い問題」も結局は「チームに対しての意識」になるのだと思います。
誰の仕事とは決まっていないけれども、やらないといけない仕事ってありますよね。
それが取りこぼされてしまう「球拾い問題」も結局は「チームに対しての意識」になるのだと思います。
田村氏
その問題も「自分ひとりの仕事はどうか」しか視点がなかったところから、「チームとしてどうすべきか」と視野が広がることで、「この仕事、やってみようかな」と考える意識と行動の変化が起こったように感じます。
それも対話を複数回にわたり重ねる中で、「チームという存在」への意識ができたことが理由だと思います。
それも対話を複数回にわたり重ねる中で、「チームという存在」への意識ができたことが理由だと思います。
真剣に考えて、真剣に相手の言うことを聞く環境がある。普段聞けない声が聞ける。表情が見える。チームの本音が見えたと感じます。
―
システムコーチング®を実施しての一番の気づきや得られたものは、どのようなものでしたか?
田村氏
システムコーチング®のプロセスは、大雑把な表現ですが「チーム・ビルディング」として非常に機能したと感じています。
例えば私がメンバーと1対1で話をしていても、上下関係はどうしても抜けないものです。ですから、率直に意見を言えないこともあります。
本音で話し合おうと、飲み会の席で皆で話をしたとしても、お酒が入るとよく喋る人と黙って聞く人にわかれたりする。あまり話さない人は、3時間で何回話したんだろか…(笑)となり、結局、全員の意見がわからない。
今回のシステムコーチング®では、「チームのあり方を皆で考えよう」という場を設定して、真剣に考えて、真剣に相手の話を聞く環境がありました。また仕事上のリーダーである私が仕切るわけではなく、コーチのファシリテートで、全体に委ねて進行します。全員に発言の機会が回って来ますから、普段あまり話さないメンバーの声も聞くことができて、新しい発見がありました。そのプロセスが、メンバー同士の相互理解に繋がり、チーム・ビルディングの上で非常に有効だったと感じます。
例えば私がメンバーと1対1で話をしていても、上下関係はどうしても抜けないものです。ですから、率直に意見を言えないこともあります。
本音で話し合おうと、飲み会の席で皆で話をしたとしても、お酒が入るとよく喋る人と黙って聞く人にわかれたりする。あまり話さない人は、3時間で何回話したんだろか…(笑)となり、結局、全員の意見がわからない。
今回のシステムコーチング®では、「チームのあり方を皆で考えよう」という場を設定して、真剣に考えて、真剣に相手の話を聞く環境がありました。また仕事上のリーダーである私が仕切るわけではなく、コーチのファシリテートで、全体に委ねて進行します。全員に発言の機会が回って来ますから、普段あまり話さないメンバーの声も聞くことができて、新しい発見がありました。そのプロセスが、メンバー同士の相互理解に繋がり、チーム・ビルディングの上で非常に有効だったと感じます。
―
今回は、全6回全てZOOMを活用してのシステムコーチング®でした。どのような体験でしたか?
田村氏
全員の表情が見えること、でしょうか。普段8~9人の顔を一斉に見ることはなかなかないですよね。
紀藤さん・大門さん(コーチ)が「皆さんこう見えますが、いかがですか?」などと発言された際に、皆の表情が変化するのですよね。本音がわかるように感じて、新鮮な体験でした。
紀藤さん・大門さん(コーチ)が「皆さんこう見えますが、いかがですか?」などと発言された際に、皆の表情が変化するのですよね。本音がわかるように感じて、新鮮な体験でした。
紀藤
確かに、発言をした際に表情の変化だけでなく、場全体の「驚き」「興味」「場が重たくなった」という“雰囲気の変化”は、オンラインでもわかりますよね。そして、そこには大切なサインが含まれているように感じます。
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特に印象に残ったシーンはどこでしたか?
田村氏
「お互いの国に訪問する」ワークが印象的でした。
チームの中にも、目標を達成したい“戦闘系の先生”と、今この瞬間を大事にしていたい“癒やし系の先生”がいて、その違いが改めて明確になりました。
加えて言えば、大きく2つ「戦闘系」と「癒やし系」にわけましたが、ワークを通じて細かく見ていくと、それぞれ個性の違いがあるのですよね。過去にストレングス・ファインダー®を活用して、“お互いの強みの違い”を理解し合うワークを行いましたが、今回のワークで違った視点からも見ることで、より深く相手のことを理解できたと感じます。
相手が持つ仕事のモチベーションやその行動に至った背景など、普段の働きぶりを見ていても「ああ、わかるな」と思いましたし、相手を尊重していくポイントが見えたように思います。
チームの中にも、目標を達成したい“戦闘系の先生”と、今この瞬間を大事にしていたい“癒やし系の先生”がいて、その違いが改めて明確になりました。
加えて言えば、大きく2つ「戦闘系」と「癒やし系」にわけましたが、ワークを通じて細かく見ていくと、それぞれ個性の違いがあるのですよね。過去にストレングス・ファインダー®を活用して、“お互いの強みの違い”を理解し合うワークを行いましたが、今回のワークで違った視点からも見ることで、より深く相手のことを理解できたと感じます。
相手が持つ仕事のモチベーションやその行動に至った背景など、普段の働きぶりを見ていても「ああ、わかるな」と思いましたし、相手を尊重していくポイントが見えたように思います。
「私の国には、3メートルくらいの岩盤がある」と聞いて、相手の守りたいものを尊重しよう、と思いました
―
具体的にはどんなところでしょうか?
田村氏
ある先生から「私の国には、入るための国境に3メートルくらいの岩盤がある」といった話を聞いたときは、「ああ、そうなんだ」と思いました。例えば、自分と相手の間に少しだけ壁を感じたときに、「私に何か至らない点があったのかな」と自分を責めるのでなく、国の特徴から学んだように、「相手の中には、何か守りたいものがあるのかもしれない」と考える視点を持つようになりました。
田村氏
人には完全に見せたくない部分、守りたい部分もあると思いますし、相手の気持ちを尊重しながら接すればいいんだな、と思いました。無理やり相手の空間に入ろうとすると、それは拒絶されるものでしょうし、相手の世界を尊重することは、お互いの関係の上でも大切なことだと思います。
「チームで繰り返されるパターンや構造」を皆が認識し、変えていくことが重要
―
その他に、システムコーチング®を通じての学び・気付きにはどのようなものがありましたか?
田村氏
善し悪しではなく「自分自身の影響力」と「チームのこれからの課題」について理解しました。
システムコーチング®を行うにあたり、皆さんにチームの強み・課題を聞くアンケートを行いました。そのコメントを見ると「田村先生に頼っているところが課題」とあったのですよね。システムコーチング®の最中に、「田村先生は1人20票持っていますから」と他の先生が発言するシーンもありました。
システムコーチング®を行うにあたり、皆さんにチームの強み・課題を聞くアンケートを行いました。そのコメントを見ると「田村先生に頼っているところが課題」とあったのですよね。システムコーチング®の最中に、「田村先生は1人20票持っていますから」と他の先生が発言するシーンもありました。
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確かにありましたよね。また田村さんが発言されるのを皆さんが待つ、田村さんの発言に他の先生が影響されるという状態が繰り返されるパターンもありました。
田村氏
17年前に内科チームが出来上がり、私一人からスタートしました。その中で段々と先生の数が増えて、診療する力が高まり、私自身の業務を減らしていきました。ゆえに、自分の影響力を意識して弱めてきたと思っていましたが、まだまだ自分が大きな柱になっていることを知りました。
今回のシステムコーチング®では「内科チームのシステムの中心になっている自分(田村先生)」も自覚しましたし、それは決して良いわけでなく、チームの将来を考える上で構造的な課題になっているとも思いました。それは、皆も改めて認識したと思います。
やはり一人ひとりが更に自立していくためにも、私自身のリーダーの形もそうですし、チームで繰り返されるパターンや構造を、皆がそれぞれ自覚し、変えていく必要があると思いました。
今回のシステムコーチング®では「内科チームのシステムの中心になっている自分(田村先生)」も自覚しましたし、それは決して良いわけでなく、チームの将来を考える上で構造的な課題になっているとも思いました。それは、皆も改めて認識したと思います。
やはり一人ひとりが更に自立していくためにも、私自身のリーダーの形もそうですし、チームで繰り返されるパターンや構造を、皆がそれぞれ自覚し、変えていく必要があると思いました。
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「チームで繰り返されるパターン」に自覚的になり、それがチームの目指す姿に向けてプラスに働いていないときに“意図的に手放す”ことは、チームが次のステージにいくために重要なことだと思いますね。
―
システムコーチング®を、どのようなチーム・組織に勧めたいと思いますか?
どんなチームでも、いろいろな意味で成果を出せると感じます。
例えば、チームとして空中分解しそうなところ、まとまっているけれどもう一歩進めそうなチームなど、それぞれのステージで効果があると思います。課題がないチームはないと思いますので。
また6回やって終わりというよりも、定期的にメンテナンスをしてチームのあり方を考えることも大事だと思います。どの時期にあるチームなのかによって、得られるものは違うと思いますが、何かしらの成果は出るのではないかと思います。
例えば、チームとして空中分解しそうなところ、まとまっているけれどもう一歩進めそうなチームなど、それぞれのステージで効果があると思います。課題がないチームはないと思いますので。
また6回やって終わりというよりも、定期的にメンテナンスをしてチームのあり方を考えることも大事だと思います。どの時期にあるチームなのかによって、得られるものは違うと思いますが、何かしらの成果は出るのではないかと思います。
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ありがとうございました。
※本プロジェクトは、株式会社カレッジ、ERAWAKE(エラウェイク)株式会社の共催で行いました。
企業情報
病院名 | 医療法人徳洲会 大隅鹿屋病院 |
設立年月日 | 昭和63年8月1日 |
管理者 | 病院長 中山義博 |
診療科 | 内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、 ペインクリニック内科、外科、呼吸器外科、心臓血管外科、 消化器外科、肛門外科、整形外科、脳神経外科、形成外科、 リウマチ科、小児科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、 リハビリテーション科、放射線科、救急科、歯科口腔外科、 麻酔科(22診療科) |